西村真悟 論文紹介

西村真悟 論文紹介

掲載雑誌:月刊日本 1号 p.116~119

発行所:株式会社K&Kプレス

コラム名:歴史に学ぶ(五十四)
 
       真珠湾と忠臣蔵 

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【抜粋】

何故、
空母機動部隊は時間どおりに予定海域に到着して攻撃機を発艦させ、
攻撃機の搭乗員も真珠湾上空に到達して攻撃予定時刻の現地時間8時を
厳密に守って、ドンピシャリ、見事に攻撃を開始しているのに、
ワシントンの駐米日本大使館員は、その攻撃前の申し合わせの時刻に
我が国の「宣戦布告」をアメリカ政府に伝達しなかったのか。

 その理由は、日本大使館員が真珠湾攻撃前夜に酒宴を開いていて
起床が遅れるという不手際によるものであるが、この想像を絶する職務怠慢によって
、我が国の勇者の正々堂々たる奇襲には、「騙し討ち」の汚名を被せられたのだ。

のみならず、この汚名は一人軍人に対してだけではなく、
日本国家と民族全体に対する汚名となった。
しかるに、怠慢によって、これほどの万死に値する国家と民族に対する
汚名をもたらしながら、アメリカ駐在日本大使館員においてその責任を自覚し
死を以って償いとした者も皆無なら、外務省の組織として其の責任を自覚した
形跡も見あたらないのは慨嘆すべきことではないか。

たとえ大使館員の一人、外務省北米担当官一人でも、アメリカ政府への
「宣戦布告」伝達が遅れた理由を述べたうえで腹を切って一死大罪を謝す者がおれば、
日本の国家と民族に対する汚名は雪がれたはずであろうに。

★☆

次に、機動部隊の司令官南雲中将そして源田実参謀においては、何故、
第三次攻撃を敢行して真珠湾の戦艦用と航空機用の燃料タンク百個以上
を破壊する措置を決断しなかったのか。
その時、源田参謀のもとには、第三次出撃準備完了の連絡が次々に入っていた。
仮に真珠湾の燃料タンクを撃破しておれば、以降アメリカ軍は西海岸にまで
後退して油を補給しなければ動くことができず、圧倒的にわが軍が有利になったではないか。

 この源田実参謀は、昭和30年代に参議院に立候補するが、
その時、一人でも「真珠湾に於いて、何故あの時、第三次攻撃をしなかったのか」、
「敵空母を誘い出して沈める為にミッドウエーに機動部隊を持っていったのではなかったのか。
陸を攻撃しに行ったのではあるまい。そうであれば、ミッドウエーに於いて、何故艦上攻撃機の魚雷をはずして爆弾に転換させたのか。その為、逆に、わが主力の空母4隻が撃沈され多くの優秀な搭乗員を失った。この事が我が国敗北の切っ掛けとなった。貴公は、それを自覚して立候補しているのか。」、
そして「貴様、ミッドウエー敗北の責任も自覚せずに、のこのこ生き残って
参議院議員になりたいとは何事か!」、「コノ馬鹿者!」と一喝する者一人もいなかったのか。

多分、いなかったのであろう。
これが、我が国の戦後という時代の歪さである。
戦後も日本人が戦士としての誇りを維持していたならば、参議院議員に立候補した
源田実氏には、これくらいの質問はしたであろう。

☆★

他方、吉良家とは何か。
幕府の髙家筆頭である。髙家とは幕府の対外的儀礼を取り仕切る家である。
吉良はその筆頭だ。幕府の朝廷に対する姿勢は如何なものであったか。
それはできるだけ朝廷を経済的にも逼迫させて、その権威の伸長を押さえることであった。
その為に、幕府は朝廷と諸大名が接触することを巧妙に禁じていた。

 さて、この幕府の対朝廷方針を遂行する髙家筆頭吉良上野介と
山鹿素行「尊皇の志」を教えられた淺野内匠頭が、ともに幕府の勅使接待役を受け持った。
この組み合わせは、ただごとでは済まない。
何があったか分からないが、大石内蔵助は察知したであろう。
「尊皇の志」の故に決して譲れない一点で、とっさに内匠頭が殺意を以って吉良に斬りつけた。

 野淺内匠頭即日自刃後、家老の大石内蔵助は思う。
主君野淺は、吉良を殺して幕府の対朝廷方針を否定し、「尊皇の志」を実現しようとした。
よって、主君の志を遂げることは家臣の務めであり、公務として吉良上野介の首を取らねばならない、と。

 従って、大石内蔵助ら四十七士は、刺客でなく奇襲でもなく、武士道に基づき、
正々堂々と山鹿流陣太鼓を打ち鳴らして正門から吉良邸に討ち入ったのである。
ちゃんばら劇ではない。隠忍自重して遂に吉良の首を取り、命をかけて主君の公の志を果たしたのだ。

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